妊娠中と産後の髪のメカニズムと対処法【前編】

妊娠・出産時と産後では、女性の体は大きく変わります。そこには女性ホルモンの関与があるのです。内科医の桐村里紗先生に、ホルモンの変化によって変わる髪の状態やそのケア方法について聞きました。

この記事を監修する専門家
桐村里紗 先生

内科医・認定産業医。tenrai株式会社代表取締役医師。
桐村里紗 先生

予防を重視し、分子整合栄養医学や食によるケアでのアドバイスが専門で、テレビや講演などで活躍。著書に『腸と森の「土」を育てる』(光文社新書)が話題に。

髪の美しさを保つために必要な女性ホルモン

髪の美しさを保つために必要な女性ホルモン イメージ

女性ホルモン、あるいはエストロゲンという言葉を聞いたことがあるでしょうか?女性ホルモンには「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2つのホルモンがあります。

女性ホルモンの働き イメージ

ホルモンというのは、体の健康を維持するための機能を調整する働きをするもので、100種類以上が体の中で見つかっています。その中の女性ホルモンは、女性にとっては重要なホルモン。

主に妊娠しやすい体を作り、妊娠から出産まで赤ちゃんを守るという役割があります。

女性ホルモンはその他にも、骨密度を維持したり、女性らしい体つきを維持したり、皮膚の潤いや弾力を保つなどの働きがあります。

女性らしい体つきを維持したり、皮膚の潤いや弾力を保つ女性ホルモン イメージ

閉経が近づくまでは、女性は男性に比べて脳血管疾患になる確率が低いのですが、その理由は、女性ホルモンのエストロゲンが、血管をしなやかに保ち、動脈硬化を予防する働きがあるからです。エストロゲンは、全身にあるホルモンレセプターと結びついて、女性の健康を維持しています。

そのホルモンレセプターは、頭皮にもあります。つまり女性ホルモンが、頭皮を健康に保って、強くてつやのある毛髪を育て、それを守るカギを握っているのです。

妊娠によって変わるホルモンと髪の状態

妊娠によって変わるホルモンと髪の状態 イメージ

妊娠前はエストロゲンが子宮内膜を厚くして、受精卵が着床しやすくし、プロゲステロンが子宮内膜の状態を整え、妊娠に備えています。

そして、妊娠した後は、プロゲステロンが妊娠を維持するための働きを担います。

妊娠を継続するためにプロゲステロンがたくさん分泌されるようになると、妊婦の体温が上がり、汗や皮脂などがたくさん分泌されるようになりますので、頭皮は通常よりも清潔に保つ必要があります。

妊娠中の体温上昇 イメージ

また、自分のものではない精子が体内に入ってきて、それによって、自分のものではない胎児ができます。本来なら異物としてとらえられ排除されてしまうはずなのですが、妊娠には「妊娠の免疫寛容」という特別なシステムが働きます。

つまり、赤ちゃんを受け入れ、守るために、免疫系は力を抑えるのです。そのため妊娠中は免疫力が下がり、感染症に弱くなっていて、皮膚も弱い状態になります。

さらに、皮膚のターンオーバーも乱れます。ターンオーバーというのは、皮膚の細胞ができてから垢となって剥がれ落ちるまでのことです。

適切なシャンプー イメージ

皮脂の分泌量が増えたことと相まって、フケ症になる方もいますので、適切なシャンプーが必要になります。

妊娠中に、髪のために食べたいもの

妊娠中に、髪のために食べたいもの イメージ

妊娠中は、胎児を育てる方に栄養が取られていきますから、バランス良く、いつもより食事をきちんと摂ることです。

特に大事になるのが、鉄分や亜鉛などのミネラル類、ビタミンB群。これらは、体内で酵素を作ったり、代謝や細胞分裂の助けになる栄養素です。特にミネラル類やビタミンB群は、細胞をどんどん分裂させたり、代謝をアップさせることに必須になってくるので、基本的には妊娠中はしっかり摂らないと、抜け毛の原因になってしまいます。

妊娠中は鉄分不足になりやすい イメージ

また、女性には隠れ貧血の方が多いのですが、妊娠すると胎児を育てる方に鉄分が使われるので、特に妊娠中は鉄分不足になりやすいわけです。しかし、鉄分が不足すると、健康的な髪の毛を作ることができなくなってしまいます。

髪の毛は、髪の毛根にある毛母細胞が細胞分裂して成長するわけですが、分裂を繰り返すために必要な要素は酸素と栄養です。

鉄分の多い食品をしっかり摂る イメージ

鉄分が不足すると、酸素を運ぶヘモグロビンが不足してしまうので、頭皮が、酸欠のような状態になってしまいます。それでは抜け毛や薄毛になってしまうのも当然なので、妊娠中は鉄分の多い食品をしっかり摂るようにしましょう。

さらに、髪の毛の材料でもあるたんぱく質は、きちんと摂取することが大切です。

妊娠中に、髪のために大事な睡眠

妊娠中に、髪のために大事な睡眠 イメージ

妊娠すると「眠くて、眠くて…」という声をよく聞きます。それは、プロゲステロンの分泌量が急激に増え、胎児を守って、妊娠を維持させようとするからです。

また、鉄分不足は睡眠の質を悪化させてしまいます。質の良い睡眠がとれないと日中の倦怠感や疲労感に繋がります。

睡眠中は、成長ホルモンなどが分泌され、1日の疲れや細胞の傷などを修正したり、古い細胞を新しくする時間。よって、良質な睡眠をしっかり取ることは、胎児の健康のためにも自分のためにも大切なことなのです。

良質な睡眠をしっかり取る イメージ

妊娠後期になると、布団の中で安定した姿勢が取りにくかったり、胎児に蹴られたりして眠りが浅くなりますし、産後は赤ちゃん中心の生活で、睡眠不足になりがちです。せめて妊娠初期や中期は、しっかり深い睡眠を取り、成長ホルモンをたくさん分泌させて、頭皮の健康も保つようにしてください。

今回は以上です!

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